依存的構造(passive-dependent pattern)の人には、心理的・行動的にいくつかの典型的な特徴があります。以下にリストアップします。
🧠 依存的構造(passive-dependent pattern)の特徴リスト
1. 「わかってほしい」欲求が強く、繰り返される
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自分の苦しみや感情を語るが、何度も同じ話を繰り返す
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聞き手の共感や反応に強く依存する(レスポンスがないと怒る、落ち込む)
2. 自己責任の回避
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状況が悪いことを、外部や他人(親、パートナー、社会)のせいにしやすい
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自分が変わるという視点に立つことを避ける
3. 援助を求めるが、助けを受けたがらない(援助拒否型依存)
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助言や提案をされても「でも…」「それは無理」と否定する
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変化を促す支援には消極的で、「ただ話を聞いてほしい」だけを求める
4. 自己無力感のアピール
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「私にはできない」「私は不器用」「私はいつも間違ってしまう」などの言葉が口癖
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相手の同情や保護欲を引き出す言動を無意識にとる
5. 自分の気持ちと行動が一致しない
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気持ちはある(やりたい、変わりたい)が、行動が伴わない
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言葉と態度がちぐはぐ(たとえば、「頑張ります」と言ってすぐに放棄)
6. 境界線が曖昧
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相手の時間・労力・感情に無自覚に依存する
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「察してよ」「どうして見てくれないの?」と暗に要求する
7. 人間関係が一方通行になりがち
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話題の中心が常に自分で、他者の話に興味がない
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「私をどう思った?」「私の気持ち、わかってくれた?」という確認が多い
8. 変化に対する恐怖が強い
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「変わること」は「失敗すること」「見捨てられること」と結びついている
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安全な不満状態にとどまろうとする
💡補足:なぜこの構造が生まれるのか?
多くの場合、幼少期において:
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過干渉・過保護
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無関心・無視
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承認が条件付きだった(良い子でないと愛されない)
といった育ちの中で、主体的に動いても報われなかった経験が蓄積されており、
「自分で動く=怖い」「誰かが助けてくれるまで待つ」が生存戦略になってしまっています。
■ 問いのリスト
「あなたは何のためにその現実を作り出したのですか?」という問いは、
単なる出来事や被害の話ではなく、自己の無意識的な選択や構造に光を当てます。
🔍心理学的にこの問いが意味するもの:
この問いは、ユングやアドラー、トランスパーソナル心理学の文脈では次のように解釈されます:
🎭 “意図せぬ演出者”としての自己に気づかせる問い
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「なぜこんなに苦しいのか?」という被害者的問いではなく、
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「この状況を自分はどこかで望んでいないか?何かを守っていないか?」というメタ認知の問い
🔁 依存的構造の人への適用例
「あなたは何のために、“わかってもらえない現実”を繰り返し創っているのですか?」
→ この問いによって、自分の中にある以下のような意図や利得に向き合わざるを得なくなります:
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「自分が動かなくてもいい理由がほしい」
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「被害者でいれば、努力しなくて済む」
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「愛されなかったことを、ずっと証明し続けていたい」
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「共感されることで、存在価値を感じたい」
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「変化して失敗するくらいなら、今のままが“安全”」
🎯 この問いを投げるときの注意点
この問いは強烈な鏡なので、本人の準備ができていないと防衛反応(逆ギレ、回避、抑うつ)が起きます。
だからこそ、適切なタイミングと信頼関係が整った時に限って使うべきです。
🔄補助質問として使える派生形
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「この現実を、どこかで“選び直すこと”を避けていませんか?」
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「その不幸に、何か守っているものはありませんか?」
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「この構造を手放したら、何が変わってしまいますか?」
以下に、IFS(内的家族システム)を用いて、**「依存的構造を持つ内なる子ども」「その子に強く影響を与えた“内なる母”」「調和と統合をもたらすセルフ」**との三者対話の事例を示します。
🎭 登場人物(内的パーツ)
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👧 子どもパーツ:「わかってほしい」「でも自分では動けない」「甘えたら嫌われる」
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👩🦳 母パーツ:「我慢しなさい」「あなたの気持ちなんか誰も聞きたくない」
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🧘♀️ セルフ(本来の自己・調停者)
🗣 IFS対話:テーマ「“わかってほしい”の奥にある真実」
🧘♀️セルフ(穏やかに)
こんにちは、みんな。
今日は、子どもパーツちゃんの声をしっかり聴きたくて来ました。
あなたの中にある「わかってほしい」っていう気持ち、教えてくれる?
👧子どもパーツ(涙ぐみながら)
…ほんとはずっと、誰かに「よく頑張ってたね」って言ってほしかった。
でも…言ったら、「わがまま」「甘えてる」って言われそうで、こわくて。
🧘♀️セルフ(うなずきながら)
そうだね。その気持ち、ずっと心の奥にしまってたんだね。
言いたくても言えなかったその勇気、今、ちゃんと受け取ってるよ。
👩🦳母パーツ(冷たい口調で)
言ったって無駄よ。
世の中はそんなに甘くないの。誰もあんたの気持ちなんか受け止めない。
🧘♀️セルフ(母にやさしく向き合って)
あなたは、どうしてそんなふうに言うの?
その言葉には、あなたなりの理由があるように思える。
👩🦳母パーツ(少し戸惑って)
…私も、甘えたことなんて一度もなかった。
誰にも助けてもらえなかった。
だから、強くならないと生きていけないって思ったのよ。
🧘♀️セルフ(静かに)
そうだったんだね。
あなたもまた、誰かに「わかってほしい」と言えなかった子どもだったんだ。
👩🦳母パーツ(目を伏せて)
…たぶん、そうかもしれない。
👧子どもパーツ(母を見ながら)
お母さんも、ほんとは寂しかったの?
👩🦳母パーツ(声を震わせて)
…ずっと、そうだった。
🧘♀️セルフ(両者を見渡しながら)
今日ここで、二人とも「ほんとは助けてほしかった」と口にできたね。
それが、自由のはじまりだよ。
これからは、わかってもらうことを待つだけの関係じゃなくて、
お互いに歩み寄っていく関係に変えていけるかもしれない。
✨補足
この対話は、以下のプロセスを含んでいます:
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子どもパーツの“願い”を言語化
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批判的な母パーツの“背景にある傷”を探る
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セルフが中立で慈愛的な“つなぎ手”として機能する
■ 導入OKのサイン
IFSにおける適切なタイミングとは、「セルフのエネルギーが十分に前面に出てきており、パーツ同士の対話を安全に導ける状態」――つまり、「内的に安全で、統合に向けたスペースがあるとき」です。
以下に、**適切なタイミングのサイン(セルフ・リード状態の兆候)**を示します。
🧘♀️セルフが出てきているサイン(=対話の適切なタイミング)
🌿 感情に呑まれていない
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泣いたり怒ったりしていても、「今、自分は泣いている」と一歩引いて見られている
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感情と自分が同一化していない
🌿 複数の視点を同時に感じられる
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「怖い」と感じている子どもの声と、「大丈夫だよ」と言っている大人の感覚が共存している
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一つのパーツだけに支配されていない
🌿 批判や恥に飲み込まれずに、好奇心がある
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「この子はなぜこう思うんだろう?」と穏やかな興味で内面を見つめられる
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恥・怒り・嫌悪が出ても、対話を閉じずに観察できる
🌿 相手(パーツ)に話しかけたい、聞いてみたいという自然な意欲がある
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「問いかけてみたい」「対話したい」と思える
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「戦う」「説得する」ではなく、「聴く」「理解する」方向に向かっている
🌿 時間や空間の感覚が安定している
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今ここにいる感じがあり、呼吸が深くなっている
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フラッシュバックや dissociation(解離)が起きていない
🔴 適切ではないタイミングの兆候(セルフが“乗っ取られている”状態)
状態 | サイン |
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子どもパーツに巻き込まれている | 「どうせ無理」「こわい」「もういやだ」が強く出て、セルフの声が聞こえない |
批判パーツが優勢 | 「こんなことしても無意味」「これは甘えだ」と内なる声が冷笑的または攻撃的 |
感情に飲まれている | 頭が真っ白・涙が止まらない・怒りが収まらない |
フラッシュバック | 昔の記憶に完全に引き込まれ、「今ここ」が消失している |
対話を試みるとさらに苦しくなる | パーツが「もう放っておいて!」「お前には話したくない」と反応する |
🧭 迷ったときのセルフ・チェック(Yesが多ければ適切)
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□ 今、呼吸がゆったりしている
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□ 自分の感情を“見ている”感覚がある
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□ パーツに対して好奇心・優しさを感じる
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□ 無理に何かを変えようとしていない
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□ 自分が「つなぎ役」として落ち着いていられる
このセルフ状態が整っていれば、対話の場を開いても大丈夫です。
■ セルフの呼び出しの儀式
とてもよい問いです。
IFSでセルフ状態に入るためには、身体感覚と内的スペースの安全を整えることが重要です。以下に、**セルフ状態に入るための「入り口ルーティン」**のモデルを提案します。
🌿セルフ状態に入るための《入り口ルーティン》7ステップ
🪷Step 1. 「今ここ」に戻る(3分)
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静かな場所に座る。目を閉じる。
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ゆっくり鼻から吸って、口から吐く。3回ほど繰り返す。
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自分の体に軽く意識を向ける。足の裏、お尻、手、肩の順に。
📌 目的:身体の感覚に戻ることで、解離や思考の渦から離れる。
🪷Step 2. 内的スペースを“場”としてイメージする
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心の中に、湖、野原、小さな家、神殿など「安心できる場所」を思い浮かべる。
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そこに「セルフとしての私」が座っているイメージを描く。
📌 目的:自分の中心に「穏やかな観察者」としての居場所を確保する。
🪷Step 3. 感情のスキャン(パーツの呼びかけ)
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「今、私の中にどんな声があるかな?」
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どんな感情がいるか、自分に話しかけるように問いかける。
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感情があれば「そこにいてくれてありがとう」と心の中で伝える。
📌 目的:パーツを“敵”ではなく、“話を聞きに来た存在”として扱う。
🪷Step 4. セルフの8つのCを確認(内観)
セルフのエネルギーの特徴、8つのCを自分の中に感じられるかをチェックします:
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Calm(落ち着き)
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Curiosity(好奇心)
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Clarity(明晰さ)
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Compassion(思いやり)
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Confidence(信頼)
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Courage(勇気)
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Creativity(創造性)
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Connectedness(つながり感)
📌 いくつか感じられればOK。全てそろわなくても構いません。
🪷Step 5. 「今はセルフでいよう」と静かに意図する
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心の中で言います:「私は今、セルフとしてここにいます」
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パーツが急かしたり、批判したりしても、ゆっくり深呼吸しながら「大丈夫、急がなくていい」と応じる
📌 目的:セルフが主導権を持つことを、パーツたちにも伝える。
🪷Step 6. 最初に話したいパーツに呼びかける
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「今、一番話したい子は誰?」と聞いてみる
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出てきたイメージや感覚に対して、やさしく問いかける:「どうして出てきたの?」
📌 ここからIFSの対話プロセスが始まります。
🪷Step 7. 対話を始める or 今日はここまでと伝える
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パーツが「まだ話したくない」と言うなら、そのままでOK
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「また明日来るから」と伝えて、穏やかにルーティンを閉じる
☕おすすめ補助アイテム
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アロマ(ラベンダー、サンダルウッド)
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薄明かり(ろうそく、行灯)
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ノートとペン(対話後の記録)
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温かいお茶(儀式的にセルフを呼び込むのに効果的)
🔁活用のコツ
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毎回完全に「セルフになれた」と感じなくても大丈夫。
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このルーティン自体が、セルフとパーツの関係構築そのものです。
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特に繰り返すことで、「いつものあの場所」に入りやすくなります。
もしあなたらしいルーティン(場所・イメージ・象徴)に合わせてカスタマイズしたい場合、お好みを教えてくれれば調整もできますよ。やってみますか?