2025/08/06

 外傷的喪失体験をした人は、たいてい自分自身の生活や周りの環境に対してのコントロールの力を失っていると感じています。

また、初期の見捨てられ体験は、依存的人間関係をつくり、パワーは依存していた相手の中にあり、自分の中にはないという感じをもたせることになります。

アートセラピーでは、アートという手段で自らの手を通し、自分自身の問題に創造的に向き合っていきます。


関 則雄. 臨床アートセラピー---理論と実践 . 株式会社 日本評論社. Kindle 版. 

セッション1ーー色彩セラピーによるセルフセラピー戦略

 Kinnyさん、こんにちは。

とても深い問いを差し出してくれてありがとう。

あなたの今の状態は、ただの「混乱」ではなく、
大きな喪失のあとに訪れる“アイデンティティの再構築”の段階です。
このフェーズにおいて、「自分は何者か?」という問いが揺らぐのは、むしろ自然で健全なプロセスとも言えます。


🎨色彩セラピー × セルフケア戦略

あなたのテーマ(グリーフ・赦し・受容・確信)に対応する、色彩セラピーをベースにした自分用のセラピープランの戦略的設計案を提示します。


🌑 フェーズ1:傷を知り、見つめる(グリーフ/怒り)

❶【記憶の色を描く】ワーク

  • テーマ:「弟と過ごした最後の思い出」「あの頃の色」など

  • 描いたあと、色ごとの感情を丁寧に言語化

  • 「これは何色の悲しみ?」「どこにある怒り?」と色で感情にアクセスする

▶目的:悲しみや怒りの“色の輪郭”をとることで、反芻から抜け出す足がかりを作る


❷【毒母への怒りを色で描く】ワーク

  • 制約なしに「怒り」を色と線で表現(抽象画)

  • 「炎のよう」「刺すような」色や形が出てくることも

  • 作品に名前をつける:「囚われた私」「言葉のナイフ」など

▶目的:感情を絵に移し、内面から一時的に距離を取る
(アンガー・リリースのカタルシス)


🌒 フェーズ2:統合の始まり(赦し/意味づけ)

❸【二枚の対比ワーク】

  • 「母を恨んでいた私」と「赦そうとしている私」をそれぞれ描く

  • 両方に存在している自分を視覚化し、間にある“揺れ”を尊重

▶目的:白黒思考を手放し、「両方あっていい」を体感する統合のステップ


❹【心の風景を描く】

  • 今の自分の心を風景として描く

  • どこに自分がいるか?風や光は?水や空は?

  • 絵の中の自分に語りかけてみる:「何を探しているの?」「何が怖いの?」

▶目的:意味を探すのではなく、「今の状態を丁寧に受けとめる力」を養う


🌓 フェーズ3:喪失の受容と未来の萌芽(クライミング/自己定義)

❺【「クライミングが象徴するもの」を描く】

  • クライミングを「象徴」として描く(岩・ロープ・道具・手)

  • それぞれの要素が、あなたにとって何を意味していたかを色と形で表現

▶目的:クライミングという行為を**「人生に何を与えてくれた存在」**として昇華する


❻【なりたい私・わからない私】の2枚描画

  • 「なりたい私」は思い込みや期待を反映しがちなので、もう1枚、

  • 「まだ見えていない私/分からない私」も描く

▶目的:答えが出ないことを抱えられる「心の器」を育てる
(“確信を持てない”自分も含めて受け入れる)


🌕 フェーズ4:今を生きる確かさへ(「何者でもないこと」の受容)

❼【色のグラデーションワーク】

  • 一色を、白〜濃色にグラデーションとして塗る

  • 無理に意味をつけず、「色の微細な変化」だけを観察する

▶目的:生き方や意味の“正解”よりも、「いまこの瞬間の存在感」に軸を移す練習


❽【「名前のない色」を探すワーク】

  • 見たことのないような混色をつくり、「名前のない感情」を色で表現

  • 自分の内面に、まだ言語化できない何かがあることを受け入れる

▶目的:「私は何者か?」という問いに、“未定のままであること”を肯定する


🎯戦略の全体構造

フェーズ テーマ 主なワーク
第1段階 グリーフ・怒りの認知 ❶記憶の色・❷怒りの色
第2段階 統合と赦し ❸対比ワーク・❹心の風景
第3段階 喪失の意味づけ・次のステップ ❺クライミングの象徴・❻2枚描画
第4段階 「いまここ」の自己受容 ❼グラデーション・❽名前のない色

☝️補足:この戦略で目指すこと

  • 「やりたい生き方がわからない」のは、“感情”がまだ道をふさいでいるから。

  • 言語ではアクセスしづらい深い感情を色で見つめ、「そのままの自分でここにいていい」という“確かさ”を取り戻す。

  • 自分の歩むべき道は、「決める」のではなく、「浮かび上がってくる」もの。

  • アートセラピーはその浮上を静かに支えるツールです。