外傷的喪失体験をした人は、たいてい自分自身の生活や周りの環境に対してのコントロールの力を失っていると感じています。
また、初期の見捨てられ体験は、依存的人間関係をつくり、パワーは依存していた相手の中にあり、自分の中にはないという感じをもたせることになります。
アートセラピーでは、アートという手段で自らの手を通し、自分自身の問題に創造的に向き合っていきます。
関 則雄. 臨床アートセラピー---理論と実践 . 株式会社 日本評論社. Kindle 版.
Kinnyさん、こんにちは。
とても深い問いを差し出してくれてありがとう。
あなたの今の状態は、ただの「混乱」ではなく、
大きな喪失のあとに訪れる“アイデンティティの再構築”の段階です。
このフェーズにおいて、「自分は何者か?」という問いが揺らぐのは、むしろ自然で健全なプロセスとも言えます。
あなたのテーマ(グリーフ・赦し・受容・確信)に対応する、色彩セラピーをベースにした自分用のセラピープランの戦略的設計案を提示します。
テーマ:「弟と過ごした最後の思い出」「あの頃の色」など
描いたあと、色ごとの感情を丁寧に言語化
「これは何色の悲しみ?」「どこにある怒り?」と色で感情にアクセスする
▶目的:悲しみや怒りの“色の輪郭”をとることで、反芻から抜け出す足がかりを作る
制約なしに「怒り」を色と線で表現(抽象画)
「炎のよう」「刺すような」色や形が出てくることも
作品に名前をつける:「囚われた私」「言葉のナイフ」など
▶目的:感情を絵に移し、内面から一時的に距離を取る
(アンガー・リリースのカタルシス)
「母を恨んでいた私」と「赦そうとしている私」をそれぞれ描く
両方に存在している自分を視覚化し、間にある“揺れ”を尊重
▶目的:白黒思考を手放し、「両方あっていい」を体感する統合のステップ
今の自分の心を風景として描く
どこに自分がいるか?風や光は?水や空は?
絵の中の自分に語りかけてみる:「何を探しているの?」「何が怖いの?」
▶目的:意味を探すのではなく、「今の状態を丁寧に受けとめる力」を養う
クライミングを「象徴」として描く(岩・ロープ・道具・手)
それぞれの要素が、あなたにとって何を意味していたかを色と形で表現
▶目的:クライミングという行為を**「人生に何を与えてくれた存在」**として昇華する
「なりたい私」は思い込みや期待を反映しがちなので、もう1枚、
「まだ見えていない私/分からない私」も描く
▶目的:答えが出ないことを抱えられる「心の器」を育てる
(“確信を持てない”自分も含めて受け入れる)
一色を、白〜濃色にグラデーションとして塗る
無理に意味をつけず、「色の微細な変化」だけを観察する
▶目的:生き方や意味の“正解”よりも、「いまこの瞬間の存在感」に軸を移す練習
見たことのないような混色をつくり、「名前のない感情」を色で表現
自分の内面に、まだ言語化できない何かがあることを受け入れる
▶目的:「私は何者か?」という問いに、“未定のままであること”を肯定する
フェーズ | テーマ | 主なワーク |
---|---|---|
第1段階 | グリーフ・怒りの認知 | ❶記憶の色・❷怒りの色 |
第2段階 | 統合と赦し | ❸対比ワーク・❹心の風景 |
第3段階 | 喪失の意味づけ・次のステップ | ❺クライミングの象徴・❻2枚描画 |
第4段階 | 「いまここ」の自己受容 | ❼グラデーション・❽名前のない色 |
「やりたい生き方がわからない」のは、“感情”がまだ道をふさいでいるから。
言語ではアクセスしづらい深い感情を色で見つめ、「そのままの自分でここにいていい」という“確かさ”を取り戻す。
自分の歩むべき道は、「決める」のではなく、「浮かび上がってくる」もの。
アートセラピーはその浮上を静かに支えるツールです。