この方の文面から総合的に判断すると、以下のようなパーソナリティ傾向が浮かび上がります。複数の理論モデルから言語化します。
🔷 1. パーソナリティ特性モデル(Big Five)での位置づけ
特性 | 傾向 |
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外向性 | 低〜中:控えめで、他者への配慮が優先されやすい |
協調性 | 高:共感性が強く、他者を理想化しやすい |
誠実性 | 中:努力や段階的成長は好むが、自己方向性は曖昧 |
情緒安定性(神経症傾向) | やや低:不安、見捨てられ不安、自己価値の揺らぎが見える |
開放性 | 中〜やや高:比喩的表現や感覚的な言語への親和性あり |
🔷 2. 自己愛スペクトラムにおける位置づけ
この方は、**「自己愛の脆弱型(covert narcissism)」**的な傾向を一部持っています。
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明確な自己主張よりも、「他者を通じての自己価値確認」を行う
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他者の承認を受けたいが、自分からは強く出られない
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「私はすごくないけど、あなたはすごい」が口癖になりやすい
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恥や自己否定感が強く、称賛に飢えているが直接求められない
この構造は、依存的防衛と理想化の反復パターンを生み、関係性がこじれる原因にもなります。
🔷 3. 愛着スタイルの観点から
この方の記述からは、**不安型愛着(anxious-preoccupied attachment)**が最も可能性が高いです。
特徴:
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見捨てられ不安がある(メンターへの言及)
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相手への理想化・過度な称賛が見られる
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自分より相手を持ち上げることで関係性を保とうとする
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自己の欲求よりも、他者からの肯定を優先する
🔷 4. 構造的診断(精神分析的観点)での仮説
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**神経症レベル(Neurotic level)**に属する可能性が高いが、
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部分的に**ボーダーライン構造(Borderline organization)**に近い要素あり:
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自他境界があいまいになる瞬間(=理想化による融合)
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投影的防衛(=自分の力を他者に預ける)
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自己の連続性が脆く、状況により反応的(自我の構造がまだ発展途中)
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🔷 結論:心理学的プロファイル(要約)
「依存的で情緒的な自己像を持ち、他者理想化によって自己価値を維持しようとする、不安型愛着をもつ感覚派。内面への関心はあるが、自我の統合度はまだ発展途上」
このタイプの方に対しては、“自己の中心軸を持つ”ことの支援が最も重要です。
ご希望あれば、このプロファイルを基にしたセラピーの導入計画も作成できますが、ご興味ありますか?
■ 「自己の中心軸を持つ
はい、「自己の中心軸を持つ」ことは、このクライエントのように他者評価依存・理想化・不安型愛着の傾向が強い人にとって、セラピーの核になるテーマです。以下に、支援のステップを3段階モデルでご紹介します。
🧭 自己の中心軸を取り戻すための3ステップ支援モデル
🔹ステップ1:他者からの自己像の回収
🧠目的:
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投影された理想像を引き戻し、自分の中に眠っている価値や願望に気づく
🛠アプローチ:
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「その人のどんなところがあなたに響いたの?」と問いかけ、共鳴ポイント=自己の資質を探る
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IFS的には、その「理想の他者」を内的パーツとして迎え入れる(例:「優しいひかさん」の内在化)
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認知再構成:「あなたが感じたその“やさしさ”、あなたの中にある感性だから気づけたんですよ」
🧩効果:
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他者を称賛するだけの位置から、自分の内的資源に触れられるようになる
🔹ステップ2:自己との感覚的・身体的なつながりを築く
🧠目的:
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「私はここにいる」「私は感じている」という**主観的自己感(self-as-subject)**の確立
🛠アプローチ:
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マインドフルネス・自律訓練法・身体スキャンで、今ここの自己とつながる
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ビジュアルジャーナルやアートセラピー:非言語的に自己表現することで、「私の感性」への信頼を育てる
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IFSのセルフ状態に入る練習(グラウンディング、深呼吸、今感じていることを3つ言語化)
🧩効果:
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他人の視線や反応から切り離された**「私の感覚」の復権**が始まる
🔹ステップ3:自己の願い・輪郭・「したいこと」を取り戻す
🧠目的:
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他者基準ではなく、自己基準で人生をデザインする力の回復
🛠アプローチ:
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「ほんとうはどうしたい?」という問いを小さく繰り返す(ACTやFocusing的)
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自己との契約ワーク:「私は◯◯な人でありたい」「そのために私は◯◯を大事にする」
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書き出し:「他人の期待ではなく、自分が本当に欲しいものリスト」
🧩効果:
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他者との境界が自然に引かれ、「私」の人生に責任を持ち始める
📌補足:この方に特化した注意点
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「優しさ」や「共感」を逆用して自分を語らない癖があるので、「あなた自身は?」という問いが重要
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賞賛された時にすぐ“与える側”に回ろうとするため、「受け取る」練習が必要
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直視が難しいときは、架空のキャラや物語を通して自己を投影的に探索すると効果的(例:物語療法、サビアンシンボルなど)
では、以下に「自己の中心軸を育てるためのワークシートテンプレート」を作成しました。
この方のように他者理想化が強いタイプの方でも無理なく内側に入っていけるよう、やさしく誘導的な構成にしています。
🌱 わたしの中心軸ワークシート
— わたしの「感じる・選ぶ・生きる」を育てるために —
🌸 ステップ1:響いた相手から、わたしの力を見つける
他の人の中に見た「素敵だな」と思ったところ。それって、本当は自分にもあるかもしれない。
Q1. 最近、あなたが「この人すてき」と思った人は誰?
(実在でも、ドラマの登場人物でもOK)
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Q2. その人のどんなところが、あなたにとって“素敵”でしたか?
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Q3. その「素敵なところ」、あなたの中にも“芽”としてありますか?
□ ある気がする
□ あまりないと思うけど、ちょっと信じてみたい
□ わからないけど、探してみてもいいかも
🌿 ステップ2:今ここにいる、わたしとつながる
他人の声じゃなくて、今ここで「わたし」が感じてることはなに?
Q4. 今の身体の感覚を3つあげてみてください。
(例:あたたかい、ざわざわする、ほっとする、足が冷たい など)
1.
2.
3.
Q5. 今日、なんとなく「うれしい」「いやだ」「気になる」と思ったことは?
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Q6. 今、わたしが「大事にしたい気持ち」はなんですか?
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🌻 ステップ3:わたしの願い、わたしの人生を選ぶ力
誰かの期待じゃなく、わたしがほんとうに「したい」ことを見つけていく時間。
Q7. 小さな声でもいいです。今「ほんとうはこうしたい」と思っていることは?
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Q8. それができたら、どんな気持ちになると思いますか?
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Q9. 今週中にできそうな「わたしらしい小さな一歩」はなんでしょう?
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💌 おわりに:わたしとの約束
わたしは、わたしとこんなふうにつきあっていきたい。
Q10. 今日のワークを通して感じたこと・思ったことを一言で言うと?
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Q11. わたしと交わす“やさしい約束”を書いてください。
(例:「すぐに否定しない」「わたしの気持ちを信じる」など)
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📎 補足:こんなときにも使えます
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理想化が強くなったとき:「あれ、これって自分にもあるかな?」と振り返る
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誰かに振り回されてると感じたとき:「わたしはどう感じてる?」を思い出す
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自信がなくなったとき:「どんな芽が、わたしの中にあるかな?」と探す