自律訓練法(Autogenic Training:AT)は、ドイツの精神科医ヨハネス・ハインリッヒ・シュルツ(Johannes Heinrich Schultz)が1932年に開発したリラクゼーション法で、自己催眠的な技法の一種です。自律神経系(特に副交感神経系)を整えることを目的としており、心身のリラクセーションやストレス軽減、不安の緩和、身体症状のコントロールに効果があります。
🔹 基本の構造(6つの公式)
自律訓練法は、以下の6つの「公式」と呼ばれる自己暗示文を、静かで落ち着いた環境で、目を閉じて心の中で繰り返すことで行います。
段階 | 公式の内容 | 目的・効果 |
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第1段階 | 「両腕・両脚が重たい」 | 筋弛緩(力が抜ける感覚) |
第2段階 | 「両腕・両脚が温かい」 | 血管拡張(血流改善) |
第3段階 | 「心臓が静かに打っている」 | 心拍の安定 |
第4段階 | 「呼吸が楽だ」 | 呼吸の安定(意識しすぎない) |
第5段階 | 「お腹が温かい」 | 内臓のリラックス |
第6段階 | 「額が涼しい」 | 頭部の冷却感(精神の鎮静) |
🔹 実施方法の流れ(シンプル版)
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姿勢を整える
椅子に腰かける or 仰向けに寝る(安全な場所で) -
目を閉じて深呼吸
リラックスの準備段階 -
6つの公式を順に心の中で繰り返す
例:「右手が重たい…とても重たい…(数回繰り返す)」 -
数分かけて徐々にすべての公式を唱える
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消去動作(体の緊張を戻す)を行う
両手を握り、腕・足を動かして、目を開ける
※この「消去動作」をせずに終了すると、倦怠感が残ることがあります
🔹 効果
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自律神経のバランス改善(交感神経の過剰興奮を抑える)
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不安・緊張・抑うつの軽減
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睡眠の質の向上
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慢性的な痛み(頭痛・胃痛など)や高血圧の緩和
🔹 注意点
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うつ状態が重度の人には不向きなことがある(内省が過剰になりやすい)
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トラウマを抱える人は、不安やフラッシュバックが出ることもあるので、専門家の指導下で行うのが望ましい
🔹 大人や臨床への応用
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医療・教育・企業のメンタルヘルス対策として導入例多数
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認知行動療法やマインドフルネスと組み合わせて使うこともある
ご希望があれば、音声誘導用スクリプトやビジュアル化したワークシートもご用意できます。
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