2025/05/02

自律訓練法

 自律訓練法(Autogenic Training:AT)は、ドイツの精神科医ヨハネス・ハインリッヒ・シュルツ(Johannes Heinrich Schultz)が1932年に開発したリラクゼーション法で、自己催眠的な技法の一種です。自律神経系(特に副交感神経系)を整えることを目的としており、心身のリラクセーションやストレス軽減、不安の緩和、身体症状のコントロールに効果があります。


🔹 基本の構造(6つの公式)

自律訓練法は、以下の6つの「公式」と呼ばれる自己暗示文を、静かで落ち着いた環境で、目を閉じて心の中で繰り返すことで行います。

段階 公式の内容 目的・効果
第1段階 「両腕・両脚が重たい」 筋弛緩(力が抜ける感覚)
第2段階 「両腕・両脚が温かい」 血管拡張(血流改善)
第3段階 「心臓が静かに打っている」 心拍の安定
第4段階 「呼吸が楽だ」 呼吸の安定(意識しすぎない)
第5段階 「お腹が温かい」 内臓のリラックス
第6段階 「額が涼しい」 頭部の冷却感(精神の鎮静)

🔹 実施方法の流れ(シンプル版)

  1. 姿勢を整える
     椅子に腰かける or 仰向けに寝る(安全な場所で)

  2. 目を閉じて深呼吸
     リラックスの準備段階

  3. 6つの公式を順に心の中で繰り返す
     例:「右手が重たい…とても重たい…(数回繰り返す)」

  4. 数分かけて徐々にすべての公式を唱える

  5. 消去動作(体の緊張を戻す)を行う
     両手を握り、腕・足を動かして、目を開ける
     ※この「消去動作」をせずに終了すると、倦怠感が残ることがあります


🔹 効果

  • 自律神経のバランス改善(交感神経の過剰興奮を抑える)

  • 不安・緊張・抑うつの軽減

  • 睡眠の質の向上

  • 慢性的な痛み(頭痛・胃痛など)や高血圧の緩和


🔹 注意点

  • うつ状態が重度の人には不向きなことがある(内省が過剰になりやすい)

  • トラウマを抱える人は、不安やフラッシュバックが出ることもあるので、専門家の指導下で行うのが望ましい


🔹 大人や臨床への応用

  • 医療・教育・企業のメンタルヘルス対策として導入例多数

  • 認知行動療法やマインドフルネスと組み合わせて使うこともある


ご希望があれば、音声誘導用スクリプトビジュアル化したワークシートもご用意できます。
やってみたいですか?