TA ゲーム一覧

交流分析(Transactional Analysis, TA)における「心理ゲーム(psychological games)」は、人間関係の中で繰り返し起こる不健全なパターンを指します。これらは、表面的な目的とは異なる動機や感情を伴い、最終的にネガティブな結果をもたらすことが多いです。以下は、エリック・バーン(Eric Berne)の著書『人はなぜゲームをするのか(Games People Play)』に基づく代表的な心理ゲームの一覧です。


代表的な心理ゲーム

1. 「かわいそうな私」

  • 概要: 自分を犠牲者のように見せることで、他者からの同情や注意を引く。
  • : 「どうして私ばかりこんな目に遭うの?」

2. 「ほら、あなたのせいよ!」

  • 概要: 他人を責めることで自分の責任を回避し、罪悪感を抱かせる。
  • : 「あなたがこうしたから、私がこんな気持ちになったのよ。」

3. 「あなたがいなければ」

  • 概要: 他者を依存的にさせ、自分の優位性を保とうとする。
  • : 「あなたがいないと何もできないわ。」

4. 「家族会議」

  • 概要: グループや家庭内で対立を煽り、ドラマを作り出す。
  • : 「みんなで話し合った方がいいと思うけど…。」

5. 「口ではそう言うけれど」

  • 概要: 提案や助言に対して反発し、自分の問題を解決しないことで注目を得る。
  • : 「それはいいアイデアだけど、私には無理だと思う。」

6. 「足を引っ張るな」

  • 概要: 他者の成功を妨げることで自分の立場を保つ。
  • : 「そんな夢みたいなこと、本気で言ってるの?」

7. 「喧嘩を売る」

  • 概要: 挑発的な態度や言葉で争いを引き起こし、権力やコントロールを得ようとする。
  • : 「どうせ君にはできないんだろう。」

8. 「もっと努力して」

  • 概要: 他者に無理難題を押し付け、自分の満足感を得る。
  • : 「まだそれしかできてないの?」

9. 「赤ずきん」

  • 概要: 他者を「オオカミ」に仕立て、自分を無力な存在として演出する。
  • : 「彼がこんなことをしたから、私は傷ついた。」

10. 「お前のことを思っているんだ」

  • 概要: 表向きは他者のためと言いながら、実際にはコントロールを目的とする。
  • : 「君のために言ってるんだよ。」

11. 「やりたかったらどうぞ」

  • 概要: 他者の行動を許可するように見せかけて、後から責める。
  • : 「それがやりたいなら別にいいけど、後悔しても知らないよ。」

12. 「勝つためには何でもする」

  • 概要: 勝利や優位性を得るために、倫理や感情を無視する。
  • : 「何が何でもこの議論で勝つ。」

心理ゲームの特徴

  • 繰り返し: 同じ状況や役割が何度も繰り返される。
  • 表面的な目的と本当の目的のズレ: 表向きは建設的に見えても、実際には不健全な結果を引き起こす。
  • 感情の搾取: 怒り、罪悪感、悲しみなどを意図的または無意識に引き出す。

心理ゲームを認識し、それをやめることで、人間関係の質を向上させることができます。どのゲームが自分や周りでよく見られるか、振り返るのも有用です。 

1. 「はい、でもゲーム」

概要

相手の助言や提案を一見受け入れるように見せかけながら、必ず「でも」と否定的な反論をつけ加えるゲーム。表面的には助けを求めているように見えますが、実際は助けを拒否して議論を堂々巡りにします。

A: 「この課題、初心者向けに取り組むならどう?」
B: 「はい、でも初心者には少し難しい気がします。」
A: 「じゃあ簡単な方法から始めるのは?」
B: 「はい、でも、それだとあまり練習にならないと思う。」

心理的背景

助けを求めつつも、自分の現状を維持したい気持ちが強いため、どんな提案も受け入れません。このゲームは、助けを求めるふりをして実際には他者に無力感を抱かせることで、支配力を得ることが目的です。


2. 「キック・ミーのゲーム(私を嫌ってくれ)」

概要

他人から批判される状況を意図的に作り出し、その批判を「ほら、やっぱり」と受け入れることで自己正当化するゲーム。被害者の立場を強化します。

Aが会議に遅刻する、または適切な準備をせずに挑む。そして、批判を受けたときに「どうせ私なんて評価されないんだから」と内心満足します。

心理的背景

潜在的には自己評価が低いが、周囲に「批判される自分」を演出することで「やっぱり自分はダメだ」という自己イメージを強化します。


3. 「仲間割れのゲーム」

概要

一時的にチームとして協力しつつ、最終的にはお互いの不一致や不満が爆発して分裂するゲームです。

グループで課題を進める中で、些細な意見の相違が蓄積し、最終的にはメンバー同士の非難合戦やチームの分裂につながる。

心理的背景

本来は協力が目的であるはずの関係性を破壊することで、自分の立場や感情を優位に保とうとする潜在的な欲求があります。


4. 「あなたのせいでこんなになったんだゲーム」

概要

自分の失敗や不幸を他人のせいにすることで、責任を回避しつつ自己正当化するゲーム。

「もしあなたがもっと早く教えてくれてたら、こんなミスはしなかったのに!」

心理的背景

自分の責任を認めることへの恐れや不安を抱えており、他者を非難することで安心感を得ます。


5. 「ひどいもんだ(大騒ぎ)ゲーム」

概要

状況を大げさに捉え、大騒ぎすることで周囲の注目を引くゲーム。自分の苦労や被害を誇張することで他者の関心を集めることを目的としています。

「昨日は家の掃除と仕事と子供の世話で本当に死にそうだった!もう限界!」

心理的背景

共感や同情を得たい、または他者に「自分の価値」を認めさせたい欲求から生まれます。


6. 「決裂のゲーム」

概要

議論や関係性が発展することを妨げ、わざと対立や決裂に向かうゲーム。最終的には「これ以上無理だ」と関係を断ち切る結末に誘導します。

相手の提案をわざと批判したり、非現実的な期待を持ち込んで交渉を破綻させる。

心理的背景

親密な関係や合意を築くことへの不安や恐れを抱えているため、破局や決裂を通じて安心感を得ようとします。


7. 「あら探しのゲーム」

概要

他人の欠点やミスを探し出して非難することで、自分の優位性を確認するゲーム。

「この資料、細かいところが全然詰められてないよね。やる気あるの?」

心理的背景

自分の不完全さを隠し、他者を批判することで自分の価値を保とうとします。


8. 「苦労症のゲーム」

概要

不必要に苦労を選び、それを他人にアピールするゲーム。自分が犠牲になっていることを誇示します。

「わざわざ遠回りして買い物してきたんだけど、本当に疲れたよ。普通の人なら絶対やらないよね。」

心理的背景

自分の苦労や犠牲を認めてもらうことで、価値を確認しようとします。


9. 「あなたをなんとかしてあげたいと思ってるんだゲーム」

概要

他人を助けるふりをしながら、実際には相手を「問題のある人」と位置づけ、優越感を得るゲーム。

「あなたがそんなに散らかしてるから、私が片付けてあげたのよ。」

心理的背景

助ける側に立つことで、自分の価値を確認し、相手を下に見ようとする心理があります。


10. 「義足のゲーム」

概要

欠点や障害をアピールし、他人からの特別な配慮を引き出すゲーム。

「この仕事が苦手なのは、昔からこういうのが苦手だから仕方ないよね。」

心理的背景

「できない自分」を周囲に認めさせることで、責任回避や特別な扱いを受けようとします。