すごくいいところに着目してますね。
パーソン・センタード・セラピー(PCT)の限界について、整理して説明します。
パーソン・センタード・セラピーの主な限界
1. 深い人格障害やトラウマには対応しにくい
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自己の内面にアクセスできる力(自己省察力)が、ある程度発達している人向きです。
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強い防衛(例:解離、妄想、境界性障害的な不安定さ)があると、
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セラピストの「無条件の受容」すら現実感を持てず、
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「愛されるために演じる」など別の問題が出てくることも。
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2. 方向づけや介入がほぼないため、迷子になるリスク
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クライアントがテーマを見失うと、ただ感情を吐き出すだけでセラピーが停滞することがあります。
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構造的なサポート(例:認知行動療法のような明確な目標設定)が必要なケースには、向いていないことも。
3. セラピストの力量差が非常に出る
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「受容・共感・自己一致」という態度だけに見えて、実はめちゃくちゃ高度な技術です。
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セラピスト自身が深く自己探究していないと、表面的な「共感ごっこ」になりやすい。
4. 文化的背景を考慮しにくい
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個人主義文化(アメリカなど)では機能しやすいが、
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集団主義文化(日本など)では、自己主張や自己選択そのものに罪悪感を感じるため、
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ただ「自由にしていいよ」と言われても苦しみが増すことがある。
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5. 短期的な成果を求めるクライアントには合いにくい
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たとえば「不安を今すぐ減らしたい」「パニック発作を止めたい」など、
即効性を期待する場合は、もっと構造的・技法的なアプローチ(CBTなど)が必要。
まとめ
パーソン・センタードは、
**「すでに芽生えかけている自己成長を、安心して開花させたい人」**には非常に力を発揮するけれど、
**「まだ自己形成の途中」「混乱が強すぎる」**場合は、
補助的なサポート(例:構造づけ、技法的介入)がないと、かえって遠回りになることもある──
これが本質的な限界です。
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はい、すごく大事なところですね。
整理してわかりやすくまとめます。
パーソン・センタード・セラピーで扱いにくいケース例
① 強い境界性(ボーダーライン)のクライアント
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感情の波が激しく、関係に理想化とこき下ろし(理想と失望)を繰り返す。
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セラピストへの「試し行動」が多く、ただ共感して受容するだけでは混乱を助長することがある。
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適切な「枠組み」「境界線」の設定(=構造的介入)が必要。
② 解離性障害や重度のトラウマを持つクライアント
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自分の感覚や記憶にアクセスすることが困難。
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安全な自己感覚(グラウンディング)がまだ不安定で、
「自由に話していいよ」では逆にフラッシュバックが起きることがある。 -
トラウマ処理には、段階的なアプローチ(例:段階的暴露や安定化ワーク)が求められる。
③ 精神病圏(統合失調症など)のクライアント
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現実検討能力(現実と幻想を区別する力)が弱い。
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セラピストの共感的態度が、妄想を補強する方向に働くリスクがある。
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現実検討を支えるための「方向づけ」や「現実テスト」が必要な場合がある。
④ 極度に依存的なクライアント
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自己決定が極めて困難で、すぐに答えや承認を求めてしまう。
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パーソン・センタードでは「クライアント自身が選ぶ」ことを重視するが、
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選ぶ準備ができていないと、放置されたように感じたり、
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ますます依存心を募らせることがある。
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⑤ 明確な短期目標を求めるクライアント
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例:「3ヶ月以内に就労できるようにしたい」「不眠を改善したい」
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パーソン・センタードは「目標設定」や「問題解決」を積極的に進めないため、 進捗が実感できず、不安や不満が強まることがある。
まとめイメージ
ケース | なぜ扱いにくいか |
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強い境界性 | 関係性の不安定さを整理するための構造的支援が必要 |
重度トラウマ | 自由な探索よりも「安全確保」と「段階的処理」が先 |
精神病圏 | 現実検討のサポートが不可欠 |
極度の依存 | 自己決定支援よりも、まず自律性支援が必要 |
短期目標型 | 目標指向的アプローチのほうが適する |
つまり──
🌱パーソン・センタードは、
「ある程度自己とつながれる土台がある人」に最高に機能するけど、
🌪️「自己の基盤がまだぐらついている人」には、
それだけでは不十分になりがちなんです。