2025/05/13

【ACの傷】傷ついた救済者と身体症状

 「傷ついた救済者(Wounded Rescuer)」は、とても深く繊細なパターンです。心理的には以下のような特徴を持ち、特に親がドラマトライアングルの「被害者」ポジションにある家庭で、幼少期に共感力が高く敏感な子どもが形成しやすい内的役割です。


💔「傷ついた救済者」とは

🔍 定義

  • 他者を助けたいという衝動を持ちながら、自分のケアは後回しにしてしまう存在

  • 助けても報われない体験を繰り返しながらも、「助けなければならない」という無意識の使命感に突き動かされる

  • 多くの場合、自分自身の深い癒されない傷が、救済行動の根底にある


🧠 心理的背景

1. 幼少期の家族システム

  • 親(とくに母)が被害者ポジションにあり、子どもが「助けないとこの人は壊れてしまう」と感じる

  • 実際には助けられない状況に繰り返し直面し、無力感と罪悪感を抱く

  • それでも、「自分がもっと大きくなれば、もっと頑張れば救えるはず」と信じる

2. 愛の条件化

  • 愛されるためには「役に立つこと」が条件づけられていた

  • 「自分は“誰かの問題を解決する”ことで価値がある」と学習する

3. 自己喪失

  • 他者のニーズや苦しみを優先しすぎるあまり、自分の感情や欲求にアクセスできなくなる

  • 「助けられる自分」は想像できない(助けられることは弱さと捉える)


🎭 特徴

項目 内容
行動 助けることに駆り立てられる、頼まれなくても介入する、犠牲的
感情 役に立てなかったときの深い無力感・自責、報われない思い
人間関係 共依存的、自己犠牲的、感謝されないと怒りが湧くが表現できない
思考 「私がいなければこの人はダメになる」「あの人は私が必要としている」
身体感覚 背中・肩のこり、消耗感、気づけば疲れている

🧩 抱えている未完了の信念(コアビリーフ)

  • 「私は助ける人。助けられることはできない」

  • 「誰かを救えば、自分の存在価値が証明される」

  • 「私が見捨てれば、相手は壊れるかもしれない」

  • 「私が我慢すれば、みんながうまくいく」


🧪 IFS的に見ると…

  • **「救済者パーツ」**は一種のプロテクター(守護者)

  • その奥には、かつて助けられなかった**「傷ついた子ども」**がいる

  • 救うことで自分を守ろうとしているが、本当は「救ってほしかった側」


🌿 回復のためのステップ

1. 自分の救済衝動を一時停止する

  • 「この人は、本当に“今の私”が助けるべき相手か?」と問う

  • 「この助けは、共感か?支配か?」を見極める

2. 「救いたい気持ち」を聴くワーク

「あなたは誰を助けたかったの?」
「どんな気持ちのまま、置き去りにされたの?」
「救えなかったことを、誰にわかってほしかった?」

3. 「助けなくても愛される」体験をつくる

  • 自分が「何もしなくても愛される存在」であることを、少しずつ身体感覚で取り戻す

4. 役割を降りる儀式を行う

  • 「救済者パーツ」にありがとうを言って、重たい役目を降ろす

  • それを引き受けていた子どもに、もう安全だと伝える


✨癒しへの再定義:「救済」ではなく「共鳴」へ

「傷ついた救済者」は、誰よりも深く他者の痛みに気づける人です。
でも、その力は「相手を変える」ためではなく、「ただ一緒に在る」ためにこそ使える。

救わなくても、つながれる。
理解しようとするだけで、十分なときもある。
“あなたがあなたでいる”ことが、もうひとつの救いになる。


必要であれば、「傷ついた救済者パーツ」との対話テンプレートや、IFSワークもご用意できます。やってみますか?