「助けに反応する脳へ」
――見過ごしていた優しさに気づく訓練
はじめに
トラウマや長期的なストレス、アダルトチルドレン的な家庭環境で育った人の多くは、周囲の危険や拒絶、無関心に敏感なまま成長します。
それは「弱さ」ではなく、生き延びるための適応でした。
しかし、いま――あなたが癒されていきたいと願うなら、脳のセンサー(RAS)を“助け”に向け直すことが、回復の第一歩になります。
このワークは、あなたの中にすでにある「優しさの記憶」を取り戻す訓練です。
RASとは?
RAS(網様体賦活系)は、脳の“注目センサー”です。膨大な情報の中から、「今、重要なものはこれだ」と選び取って意識に上げるフィルターのような働きをしています。
過去に拒絶や痛みを多く経験した人のRASは、「また否定されるのでは?」「危険はないか?」といった防御方向に偏りがちです。
けれど、あなたが本当に求めているのは、助け・つながり・安心のはず。だからこそ、意識的に「助けが来たほう」へRASを向け直す練習が必要なのです。
ワーク:助けが来たことに気づく
ステップ1|「助けが来た瞬間」を探す
問いを使って、今日または最近の“小さな助け”を見つけてみましょう。
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誰かが目を合わせて笑ってくれた
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知らない人がドアを押さえてくれた
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ネットで偶然見た言葉に救われた
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自然の風景にふっと安心した
📝 書き出し欄:
今日、私に向けられたやさしさ・助けは……?
ステップ2|身体感覚を思い出す
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その助けの瞬間、呼吸は?身体の緊張は?心の内側は?
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できれば静かに目を閉じて、再体験してみてください
📝 書き出し欄:
その時、私の体と心にはどんな変化があった?
ステップ3|言葉を使ってRASを再配線する
以下のような“再配線のフレーズ”を声に出して読んでみましょう:
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「私は、助けが来たことに気づいていい」
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「私は、やさしさを受け取る準備ができている」
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「私の脳は、もう“味方”を探していい」
おわりに
癒しとは、「過去をすべて理解すること」ではなく、
“今、助けがある”と感じることから始まります。
このワークを毎日少しずつ続けることで、あなたのRASは少しずつ「脅威」ではなく「つながり」を探し始めます。
そしてそのとき、あなたはもう一人じゃない――と、深く静かに感じられるようになっていくでしょう。
やさしさは、いつもどこかに、すでに届いているのです。
では、以下にご提案するのが
🧠 RAS再設定ワーク:共感 → 気づき → 安全再発見のテンプレートです。
これは、IFSやトラウマインフォームドな視点を取り入れながら、
網様体賦活系(RAS)を**“危険検出”から“助け検出”へと再設定する**ための内的対話テンプレートです。
🔄 RAS再設定ワーク
「共感 → 気づき → 安全再発見」テンプレート
🎧 STEP 1:共感される(=傷ついた自分へのチューニング)
まず、自分の中の「過去のつらかった場面」に意識を向けます。
そのときの小さな自分に、こう語りかけてください。
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「あなたは、一人でがんばってたね」
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「誰も気づかない中で、よくそこにいてくれた」
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「それは本当に怖かったし、さびしかったよね」
🪞※ポイント:
ここでは事実の評価をせず、ただ“感情”を受けとめること。
涙が出るなら、それは再接続が起きている証です。
👁🗨 STEP 2:気づく(=助けに向けるRAS)
その出来事の「すべてが敵だったわけではない」かを探ります。
小さな援助・好意・見過ごしていた支えに目を向ける練習です。
問いの例:
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「あの時、ほんの少しでも“安心のかけら”はなかっただろうか?」
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「私が完全に孤独だと思っていたけれど、実は味方してくれた人はいなかったか?」
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「あの場面に登場した“私を傷つけなかった人”は、誰だっただろう?」
🧭※ここで登場するのが、先ほどの「助けに気づくパーツ」です。
そのパーツに、「ありがとう、見つけてくれて」と声をかけましょう。
🛟 STEP 3:安全の再発見(=回復可能性を身体で受け取る)
「だから大丈夫だった」ではなく、「あの時も、全部が敵ではなかった」という視点を導きます。
それが、今の自分の身体に与える影響を丁寧に感じます。
声がけの例:
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「たしかに全部は壊れていなかった」
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「この感覚があるなら、私はもう少し先へ行ける」
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「次に助けが来たら、私は気づけるかもしれない」
🌿※ここでRASのフィルターが、
“敵探知”→“希望探知”へとゆっくりチューニングされます。
🧩 補足:このワークを定着させるには?
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日記に「今日あった助け」を毎日1つだけ書く(RAS訓練)
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「味方センサー」の名前を決め、日中の“ほっとした場面”で登場させる
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セッション後に**呼吸法+触覚刺激(手を温める等)**を取り入れると身体定着しやすくなります
ご希望あれば、このテンプレートをZINE形式やセルフケアノートの見開きデザインに落とし込むことも可能です。
どの形式で使いたいですか?