2025/03/28

【施術家の言語学】言ってはならない言葉

 カウンセラーがクライアントに対して「あなたの人生が羨ましいです」と発言することには、非常に慎重であるべき理由があります。特に、逆境を経験しているクライアントに対しては、このような言葉が適切でない場合が多いと考えられます。

なぜカウンセラーが「あなたの人生が羨ましい」と言うべきではないか?

1️⃣ クライアントの感情を無視する可能性がある  「あなたの人生が羨ましいです」という発言は、クライアントの苦しみや痛みに対して十分な理解を示していないように受け取られる可能性があります。逆境を乗り越えてきた人々は、その背景に多くの痛みや葛藤を抱えていることが多いです。この言葉が無神経に感じられ、クライアントが自分の苦しみを軽視されたと感じることがあります。

2️⃣ カウンセラーとクライアントの関係に不適切な力関係を生む  カウンセラーがクライアントの人生を「羨ましい」と感じるという表現は、役割を逆転させ、カウンセラーがクライアントに感情的な負担をかけているように映ることがあります。クライアントの人生や苦しみは尊重されるべきであり、カウンセラーは常にその立場を保持するべきです。

3️⃣ 感情的な依存を生む恐れがある  このような言葉は、クライアントに対して過度な感情的な依存を促す可能性もあります。カウンセラーがクライアントの人生を「羨ましい」と感じることで、クライアントが自分を過大評価し、カウンセラーの期待に応えようとするプレッシャーを感じることもあります。

4️⃣ 「逆境から得た学び」を軽視する可能性  逆境体験を持つ人々は、その困難を乗り越えてきたからこそ、深い知恵や強さを持っている場合が多いです。カウンセラーがその経験を「羨ましい」とすることで、その人の成長や克服した力を十分に評価していないように感じられることがあります。逆境から学んだことが、その人の成長の根底にあるのに、外部からは「羨ましい」と思われることは、逆に軽視されたと感じることがあるかもしれません。

カウンセラーとしての評価

カウンセラーの主な役割は、クライアントが自分自身を理解し、受け入れ、癒しのプロセスを進められるようにサポートすることです。逆境を持つ人に対して「羨ましい」と言うことで、カウンセラーが感情的な一方通行に陥る可能性が高く、クライアントが自己理解を深める機会を奪う可能性もあります。

そのため、このような発言は、カウンセリングの目的や倫理的な観点から見ても避けるべきだと思います。

代わりに使うべき表現

1️⃣ 「あなたの成長や強さに感銘を受けました」
 これなら、クライアントがどれだけ逆境を乗り越えて成長してきたかを尊重し、評価する言葉になります。

2️⃣ 「あなたの経験から学ぶことがたくさんあります」
 これも、クライアントがどんな困難を経験してきたか、その中で得た知恵に対して敬意を払っていることが伝わります。

3️⃣ 「その経験が今のあなたを作り上げているのですね」
 過去の経験を否定することなく、今の自己を尊重する表現です。

結論

カウンセラーが「あなたの人生が羨ましいです」と言うことは、クライアントの感情や成長を適切に尊重する態度を欠いた発言となりがちです。代わりに、クライアントの努力や成長を讃える言葉を使うことで、より良いカウンセリングが実現できます。