「母親を守っていれば生きられる」という人生脚本(ライフスクリプト)は、しばしばAC(アダルトチルドレン)や共依存傾向を持つ人に見られます。これは「愛されるためには母の世話をしなければならない」「母を守ることで存在価値を得る」といった無意識の信念から来るものです。このスクリプトは、自己犠牲と役割混乱のうえに成り立っており、自分の人生を生きることを妨げる深い根っこになります。
🔧 この人生脚本に対するセラピープラン(段階的アプローチ)
【第1段階】気づく(Awareness)
✦ 目的:脚本の存在を明確に自覚する
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家族関係を振り返り、「母を守る」ことが自分の人生選択にどう影響してきたかを記述
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子どもの頃の家庭内役割をIFSやTEAモデルなどでパーツ分解
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「私がやらなければ、母が壊れてしまう」という信念が形成された体験を特定
📘ワーク例:「母が壊れたら世界が終わる」と思った瞬間リスト
📘読書支援:シュタイナー『家族という病』や 宮地尚子『傷ついたあなたへ』
【第2段階】許す・哀しむ(Grief & Permission)
✦ 目的:本来の「子どもでいられなかった悲しみ」を感じる
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「母を守りたかったけど、本当は守れなかった」悲しみを表現(アートセラピー、日記など)
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「守ることでしか愛されなかった」自己への哀悼と癒し
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「母親は自分で人生を生きる責任がある」という現実検討
🎨アート例:「守ってきたもの」の絵を描いてみる
✍️ライティング:「守らなかったらどうなっていた?」という仮想ストーリーを書く
【第3段階】境界を引く(Boundary)
✦ 目的:自分と母の間に心理的境界線を持つ
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「母の不幸=自分の責任ではない」と再定義
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「母の痛みを見ても、自分の人生に集中できる」トレーニング
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必要なら現実の距離(時間・空間)を確保
💬例:「その話は今は聞けない」と言える練習
🧭チェックリスト:「罪悪感で選んでないか?」日々の決断を振り返る
【第4段階】自己の人生を再選択する(Rewriting)
✦ 目的:「母を守るための人生」から「自分を生きる人生」へ
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本当はやりたかったことリストを作る(「母が悲しむからやらなかったこと」含む)
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「守る役割」以外の自己イメージ(旅人・創造者・表現者など)を探る
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新しい人生脚本を書く:「私は〇〇をすることで価値を持つ」
🖋例:ライフスクリプト再構築ワーク:「私は母の犠牲者ではなく、選ぶ人である」
🎭アートワーク:「自分の人生を取り戻す女神像」などを描く
【第5段階】再発防止とサポート形成(Integration)
✦ 目的:脚本への後戻りを防ぎ、継続的に支援を得る
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共依存パターンを見抜くスクリプトリスト作成
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「母を助けたくなる自分」と付き合う自己対話の習慣づけ
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セルフケア計画や、健康な支援者とのつながりを育てる
🛠例:「母親を助けたくなったとき用スクリプト集」
🌱日記習慣:「今日私は自分の人生を生きたか?」を毎晩問う
✴︎補足:このスクリプトを持つ人に特有の落とし穴
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**「母の機嫌が私の安全」**という誤認
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「他人の期待に応えること=生きること」という思い込み
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「自分が幸せになると母が不幸になる」などの罪悪感連動
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とても良い問いです。
「母の痛みを見ても自分の人生に集中できる」ようになることは、
共依存的な脚本を抜ける最重要スキルのひとつです。
これは、“母の感情”と“自分の責任”を切り離す訓練とも言えます。
🎯 目的
「共感はしても、巻き込まれない」
「母の人生は母のもの。私は私を生きる」
というスタンスを、感情・身体・行動レベルで定着させること。
🛠 トレーニングメニュー(段階別)
🔹STEP 1:観察と言語化トレーニング(認知)
✦ トレーニング内容
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「母が痛がっている時の表情・声・仕草を観察する」
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自分の中にわく感情・身体反応を分離して書き出す
✍️例:
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「母が声を震わせて“私はもうだめ”と言った瞬間、胸が締め付けられた」
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「私の中に“なんとかしなきゃ”という緊張が走った」
🔸このステップでは「母の痛み」と「自分の反応」を切り分ける習慣を育てます。
🔹STEP 2:意識の分離トレーニング(身体)
✦ トレーニング内容
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呼吸法・ボディスキャン・グラウンディングで自分の身体に戻る
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「私の体は、私の感情で満たす」と意識する
🧘♀️実践例:座ったまま短時間でできる
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深呼吸 3回
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「今、椅子に座っている感覚」「足の裏が床に触れている」などに意識を向ける
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「母の感情は母のもの。私は今ここにいる」と静かに唱える
🔹STEP 3:選択の再設定トレーニング(行動)
✦ トレーニング内容
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母からの“助けを求めるサイン”に対し、自分の選択権を自覚して応答する
💬セリフ練習:
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「うん、心配だね。でも私は今、自分のことを優先したいの」
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「それ、どうしたらいいと思ってる?(=返して主体性を持たせる)」
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「私は今は動けないけど、あなたならできると信じてる」
✅ ここで大事なのは、「優しさ=なんでも引き受けること」ではないという認識の修正。
🔹STEP 4:回復感情の育成(感情)
✦ トレーニング内容
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「母の苦しみ=私の失敗ではない」と自分を安心させるセルフトーク
💖セルフトーク例:
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「母は母の課題を生きている。私は私の人生を生きている」
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「悲しみを感じても、私には境界がある」
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「私は“良い娘”であることより、“自分自身であること”を選ぶ」
🔹STEP 5:意識の焦点移動(創造)
✦ トレーニング内容
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「母を心配している脳」から、「自分の創造に向かう脳」へ焦点を切り替える練習
🎨実践アイディア:
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絵を描く(=“今ここ”の自分に集中)
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コラージュで「母の痛み」と「私の夢」を両方並べて、視覚的に境界を見る
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書く瞑想:「母が苦しんでも、私は〇〇をやる理由がある」
🎁おまけ:トリガー時に使える3語フレーズ集
状況 | 3語で返すワード |
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罪悪感が出た | 「わたしの人生」 |
助けてと言われた | 「境界が要る」 |
苦しそうな声を聞いた | 「共感は自由」 |
体が勝手に動こうとした時 | 「今は止まる」 |
ご希望あれば、「母のゲームに巻き込まれない」ための状況別セリフ集もお作りしますよ。
必要ですか?