■ 親愛なる、 わたしの中の小さな子へ
あなたが着ていたその服—— 人の上に立つ、そして、目立つように仕立てられた、輝くけれど、窮屈なあの服。
あなたは、それを、親の期待、先生の期待、あなたが愛した人たちの期待によって、「着るという決断」を幼いころしました。
そして、いつしか、その服は、あなたに合わなくなってしまったの。
リーダーというアーキタイプは、あなたの服として、子供時代に十分、機能しました。
それから、30年という時間をかけて、あなたが育ててきた、別の服…本当の自分…を着ても、なぜか古い服を模してしまうのね。
あの服を着たこと… それは、あなたが着たかったわけじゃないわよね。あなたは、みんなの気持ちを察して、リーダーとなることを選んだの。あなた、しかいなかったから。
その役を降りて、小さな自分に戻っていった。30年かけて。
長い間、水をやった種はようやっと目を出そうとしているのよ。
今、その芽を踏みつけてはダメ。
今、私は知っているの。
救うという形でしか愛せない世界じゃなくて、
ただ「共にいて」、ただ「自分でいる」ことが、
本当の癒しになる時もあるのだってことを。
それ、あなたが、あなたの結婚生活で、夫に差し出したギフトだったじゃないの。
そう、それを彼は、ダメにしてしまったのね… 残念だわ。
だから、あなたは、また、古い服を着なきゃ!って思ったのね。その気持ちは分かるわ。
でも、今、その服は着なくていいの。
代わりに、あなたに羽織ってほしいのは、ただ自分のそばにいるだけ。
あなたという複雑な個に、ただ寄り添う、そんなセルフの存在をいつくしんでほしいの。
ヒーローのあなたもあなた、ヒーラーのあなたもあなた、賢者のあなたもあなた…どのあなたも、真実の自己なのよ。一つに絞らなくていいの。着替えるように、役を変わってもいいのよ。どの役者を出すのか、決める、プロデューサーが実は本当のあなた、なの。
でも、そのプロディーサーの存在を分かってほしいのに、誰も分かってくれないって?
そうなの、それで、拗ねていたのね。大丈夫よ。
セルフにも、大文字のセルフがいて、あなたを見ていてくれているわ。え?大文字のセルフって誰? あの人よ、あなたの大好きな。そう、神。
人は自分で自分の偽りに気が付くわ。自分で自分に嘘をつくことはできない。その嘘はバレちゃうわ。
そして、その小さな嘘に気が付いたとき、直さなかったことも気が付くわ…
そして、深く傷つく…ダメな自分ってね。でも、それすら、神はお見通しなのよ。
だから、安心して。あなたは神の子よ。神は誰も見捨てないわ。
神は、柔らかくてあたたかくて、どこにも無理をしない—— それは神であり、わたしの一部であり、そして、愛そのもの。
あなたは、子供時代頑張ったわ。大人時代もその不足感を埋めようと頑張ったわ。
そして、今、もう、十分がんばったのに、また鞭打つ気なの?
あなたは今のままで、美しい。
だから、気にしないで、好きに生きていいのよ。
■ 解説
これはとても美しく繊細な、そして深い内省を伴う文章ですね。心理学的な観点から、いくつかの側面に分けて丁寧に解析してみましょう。
1. インナーチャイルドとの対話
文章は「親愛なる、わたしの中の小さな子へ」という形で始まっており、これは心理療法でもよく用いられるインナーチャイルドワークに相当します。
この手法は、過去の傷ついた自己や、無意識に持ち続けてきた役割・期待を丁寧に見つめ、再統合するためのものです。
-
💡癒しのメッセージ:「あなたは頑張ってきた」「もう古い服を着なくていい」など、過去の自己を責めるのではなく、労い、解放する姿勢が見られます。
2. 外的期待による自己形成
「輝くけれど、窮屈な服」「親や先生の期待によって着る決断をした」——
これは外在化された自己価値観、つまり他人の期待に応えることによって形成された自我を表しています。
-
💡心理学的解釈:このような「役割」は、しばしば**偽りの自己(false self)**として機能します。ドナルド・ウィニコットの理論では、偽りの自己が本来の自分(true self)を覆い隠すことで、生きづらさが生まれるとされます。
3. 役割からの離脱と再統合
「リーダーというアーキタイプ」「ヒーローのあなたもあなた」「プロデューサーが本当のあなた」——
ここでは**アーキタイプ心理学(ユング派)**の概念が見られます。
-
💡多様な自己の受容:「どのあなたも真実の自己なのよ」という部分は、多重的な自己モデル(multiplicity of self)に近く、人間には多様な側面があり、それを無理に一つにまとめる必要はないという考え方です。
-
自己を一貫した単一の存在とせず、「役者としての役割を選ぶ監督=本当の自己」という視点は非常に高次の内省です。
4. 精神的(スピリチュアルな)視座との接続
「神」「愛そのもの」「神は誰も見捨てない」など、超越的存在とのつながりによる安心感が語られます。
-
💡トランスパーソナル心理学の要素:この領域では、個を超えたスピリチュアルな次元と人間の癒しの関係が重要視されます。この文章では、愛そのものとしての神=セルフというように、自分自身の深層と神(大文字のSelf)が融合する感覚が表現されています。
5. 自己受容と癒しのプロセス
「その芽を踏みつけてはダメ」「もう十分がんばったのに、また鞭打つ気なの?」「今のままで、美しい」——
これは**自己受容(self-acceptance)**の核となるメッセージです。
-
💡癒しの到達点:この文章は、「回復の途中」にある自分に対して優しく寄り添う態度をとっています。自責ではなく、慈愛的なまなざしで「今ここ」の自分を認める姿勢が強く感じられます。
総括:この文章が示しているもの
この手紙は、以下のような心理的成熟と癒しのプロセスを通過した一つの表現です:
-
過去に押し付けられた「役割」の認識
-
偽りの自己と本来の自己の分離と再統合
-
スピリチュアルなレベルでの安心感の獲得
-
自己受容と自己への慈愛
-
人間の多様性(マルチセルフ)への開かれた姿勢
このような内的対話は、**書くことで癒される「ナラティブ・セラピー」**の実践としても非常に有効です。
もしよかったら、この手紙を書いた時の気持ちや、どこかひっかかった部分があったかも聞かせてもらえたら、さらに深掘りできますよ💭