モチベーショナル・インタビューイング(Motivational Interviewing:MI)は、
「本人の中にある変化への意欲(モチベーション)」を引き出すための対話技法です。
心理的抵抗がある人に「やる気を出させる」のではなく、
“やる気の芽”を見つけて育てるのが目的です。
■ モチベーショナル・インタビューの4原則(OARS)
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Open questions(開かれた質問)
→「なぜそう感じたんですか?」「どうしてそれが大切なんでしょう?」
相手の考えを引き出すため、イエス・ノーでは答えられない質問を使う。 -
Affirmation(承認・肯定)
→「それだけ考えてるなんて、すごく真剣に向き合ってますね」
本人の強みや努力を認め、自己効力感を高める。 -
Reflective listening(反射的傾聴)
→「つまり、今は不安だけど、少し変わってみたい気持ちもあるんですね」
相手の言葉の裏にある感情や意図をくみ取って言い返す。 -
Summarization(要約)
→「今日は、変わりたい気持ちと、不安が両方あるって話をされましたね」
セッションの流れや本人の気づきを整理し、意志決定を促す。
■ 変化のステージに応じた対応
MIは、クライエントの**変化の準備度(5段階モデル)**に合わせて対応します。
ステージ | 特徴 | MIの対応 |
---|---|---|
無関心期 | 変わる気がない | 判断せず、現状のメリット・デメリットを探る対話 |
関心期 | 変わったほうがいいかも… | 「変わる理由」を本人の言葉で語らせる |
準備期 | ちょっとやってみようかな | 小さな一歩の計画を一緒に立てる |
行動期 | 実際に始めている | 行動の維持を支援、障害の予防策を一緒に考える |
維持期 | 続けている | 成功体験を強化、再発予防に向けた伴走 |
■ ポイントまとめ
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相手に「変わりたい」と言わせるのではなく、言いたくなるような場をつくる
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押しつけはNG。内発的動機(本人の価値・目標)に光を当てる
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「葛藤」こそが変化の入口。**両価性(ambivalence)**を大切に扱う
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了解です!
以下に**モチベーショナル・インタビューイング(MI)**で使える、実践的な質問例を「変化の段階」ごとに整理してお届けします。
すべて、「相手の中にある“変わりたい気持ち”を引き出す」ことを目的にしています。
🌀【1. 無関心期】
(変わるつもりがない・必要性を感じていない)
🗨️「正しいことを教える」より、「話を聴き、気づきを促す」質問が重要。
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「今のやり方で、どんなところがうまくいってると思いますか?」
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「周りの人は、あなたのことで何か心配してることってあると思いますか?」
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「今、変わることに関してどんな気持ちがありますか?」
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「これまでに誰かに“こうした方がいい”と言われたことはありますか?どう感じましたか?」
🔁【2. 関心期】
(変わった方がいいかも…と思い始めている)
🗨️ 変化への「両価性(揺れる気持ち)」に寄り添う。
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「変わらないことで得られるものって、何があると思いますか?」
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「逆に、もし変わったら、どんな良いことがあるでしょう?」
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「そのままでいたい気持ちと、変わりたい気持ちが両方あるように感じます。どうですか?」
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「今のままでいた場合、半年後・1年後はどうなっていると思いますか?」
🚪【3. 準備期】
(実際に変わることを考え始めている)
🗨️ 小さな一歩を一緒に探す。
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「もし1つだけ今週やることを選ぶとしたら、何を選びますか?」
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「最初の一歩として、どんな準備が必要そうですか?」
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「これをやってみようと思うとき、何が障害になりそうですか?」
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「それを乗り越えるために、あなたならどんな工夫ができそうですか?」
🛠【4. 行動期・維持期】
(行動を始めている・続けている)
🗨️ 意欲の維持と、成功体験の強化を。
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「この前やってみた中で、うまくいったことは何ですか?」
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「困難だったけど乗り越えられたことってありましたか?」
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「続けるために、どんな工夫をしてみたいですか?」
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「一番の味方になってくれるのは、どんな人だと思いますか?」
🧠【その他:変化言語を引き出す質問】
「変化言語(Change Talk)」とは、
本人の口から出る「変わりたい理由」や「やってみたい気持ち」を指します。
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「なぜ、今ここに来ようと思ったんですか?」
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「もし変われたら、どんなふうに生活が変わると思いますか?」
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「一番大事にしたい価値って、何ですか?」
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「今、何かが“引っかかってる感じ”ってありますか?」
■ CT事例
もちろんです!
「変化言語(Change Talk)」とは、クライエントが自発的に変わろうとする意志・理由・希望を口にする発言のことです。
モチベーショナル・インタビューイング(MI)では、この言語を聞き逃さず、育てるのが最重要ポイントになります。
🔥 代表的な「変化言語(Change Talk)」の種類と事例
MIでは「DARN–CAT」というフレームで分類されます:
DARN(まだ行動には至ってない段階の変化言語)
種類 | 説明 | 発言例 |
---|---|---|
Desire(願望) | 変わりたい、変えたいという気持ち | 「もうこんな生活やめたい」「もっと自由に呼吸したい」 |
Ability(能力) | できるかも、やれそうという見通し | 「やろうと思えばできる気がする」「一歩ずつなら、私でも進めそう」 |
Reason(理由) | なぜ変わりたいのか、理由を語る | 「このままだと家族に申し訳ないから」「健康を崩したくないんです」 |
Need(必要性) | 変える必要があるという認識 | 「そろそろ本気で何か変えないと」「このままだと本当にヤバい気がする」 |
CAT(実際の行動に近づいた段階の変化言語)
種類 | 説明 | 発言例 |
---|---|---|
Commitment(決意) | やると決めた・やる気を表明 | 「週に一度は運動します」「もうやめるって決めました」 |
Activation(始動) | 準備を始めている | 「まずは資料を集めてみました」「友達に相談してみようかと」 |
Taking steps(実行) | 実際に行動を起こした | 「昨日はいつもの半分の量にしました」「今日、カウンセリングに来たこと自体が大きな一歩です」 |
👂「変化言語」の拾い方・育て方(例)
🗨️ クライエント:「もう疲れました。こんな関係、続けていくのしんどいです」
🎧 カウンセラー:「“こんな関係”を続けたくない気持ちがあるんですね。どんなふうに変えられたら、楽になりそうですか?」
🗨️ クライエント:「やろうと思っても、どうせまた三日坊主になるし」
🎧 カウンセラー:「それでも“やろうと思った”っていう気持ちが、ちゃんとあったんですね。それは何か、変えたいことがあるってことですか?」
必要であれば、「Change Talk」を育てる反射的応答のテンプレート集もご提供できます。興味ありますか?
■ 反射的応答のテンプレート集
お待たせしました!
以下に「変化言語(Change Talk)」を育てるための反射的応答(Reflective Responses)テンプレート集をお届けします。
これはモチベーショナル・インタビューイング(MI)の中核技法であり、
クライエントの「変わりたい気持ちの芽」を否定せず、そっと水をやるような言葉かけです。
🌱「Change Talk」を育てる反射的応答テンプレート集
※「あなた=クライエント」、MI実践者=支援者
🟢 Desire(願望)に応答する
クライエント:「もっと落ち着いた毎日を送りたいんです」
反射的応答例:
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「“落ち着いた生活”を望んでるんですね」
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「今のままだと、ちょっと違うと感じてるんですね」
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「その“もっと”って、どんな毎日ですか?」
🟡 Ability(できるかも)に応答する
クライエント:「やろうと思えば、できる気もするんです」
反射的応答例:
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「“できそう”って感覚が、少しあるんですね」
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「その“できる気がする”って、いつ感じましたか?」
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「じゃあ、できたことが過去にもあるのかも?」
🔶 Reason(理由)に応答する
クライエント:「親に迷惑かけたくないから、そろそろ…」
反射的応答例:
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「親御さんへの思いが、行動のきっかけになりそうですね」
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「“そろそろ”って思える何かが、今あるんですね」
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「“迷惑かけたくない”って、あなたにとってどんな意味がありますか?」
🔴 Need(必要性)に応答する
クライエント:「ほんとは、こんな生活、変えなきゃって分かってるんです」
反射的応答例:
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「“変えなきゃ”って気持ちは、前からありましたか?」
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「その“分かってる”っていう直感、けっこう大事かもしれませんね」
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「どこかで、“このままじゃダメだ”って声がしてるんですね」
🔷 Commitment(決意)に応答する
クライエント:「次回までに、やってみます」
反射的応答例:
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「“やってみよう”って決めたんですね」
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「どうして今回、それをやるって思えたんでしょう?」
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「どんなふうに進めるか、もうイメージありますか?」
🟣 Activation(始動)に応答する
クライエント:「昨日ちょっとだけ調べ物してみたんです」
反射的応答例:
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「行動を起こし始めたんですね」
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「それって、あなたにとって大きな一歩だったかもしれませんね」
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「何かが動き出した感じ、ありますか?」
🟤 Taking Steps(実行)に応答する
クライエント:「昨日、実際に言ってみました」
反射的応答例:
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「もう実際に行動に移してるんですね」
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「どうでした?やってみた感触は」
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「やってみたこと自体が、大きな変化への第一歩ですね」
💡補助的テンプレ:展開を促すフレーズ
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「それについて、もう少し詳しく聞かせてもらってもいいですか?」
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「それ、あなたにとってはどんな意味がありそうですか?」
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「その“変えたい気持ち”が出てきたのって、いつごろからですか?」
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「どうして今、それを話してくれたんでしょう?」
このテンプレートは、**内的動機づけをつぶさず、言語化を助けるための「光のレンズ」**です。
必要があれば、PDFに整えたり、MI練習会用のミニ冊子にもできます。どう仕上げましょうか?