2025/04/02

【深層心理】スキーマ療法 分類

 スキーマ療法では、18の早期不適応スキーマ(Early Maladaptive Schemas)を**5つの領域(分類)**に分けることができます。以下にリストアップします。


1. 分離と拒絶(Disconnection & Rejection)

👉 「他者との基本的な絆が安全でない」という信念

  1. 見捨て(Abandonment/Instability) – 「どうせ見捨てられる」

  2. 不信感/虐待(Mistrust/Abuse) – 「人は裏切る・傷つける」

  3. 情緒的剥奪(Emotional Deprivation) – 「愛や支えを得られない」

  4. 欠陥/恥(Defectiveness/Shame) – 「私は根本的にダメな人間」

  5. 社会的孤立/疎外(Social Isolation/Alienation) – 「私は仲間外れになる」


2. 自律性と機能不全(Impaired Autonomy & Performance)

👉 「自分は自立できない/適切に機能できない」という信念

  1. 依存/無能(Dependence/Incompetence) – 「自分では何もできない」

  2. 脆弱性(Vulnerability to Harm or Illness) – 「すぐに危険が襲う」

  3. 巻き込み/未分離(Enmeshment/Undeveloped Self) – 「自分と他者の境界がない」

  4. 失敗(Failure) – 「自分は何をやってもダメだ」


3. 他者への過剰適応(Excessive Responsibility & Standards)

👉 「他者に合わせすぎて自己を犠牲にする」信念

  1. 服従(Subjugation) – 「人の言うことを聞かないといけない」

  2. 自己犠牲(Self-Sacrifice) – 「自分が犠牲にならなければならない」

  3. 承認・愛情の過度な追求(Approval-Seeking/Recognition-Seeking) – 「人に認められないと価値がない」


4. 制限された自己表現(Impaired Limits)

👉 「自分をコントロールできない/制限できない」という信念

  1. 権利意識/特権(Entitlement/Grandiosity) – 「自分は特別でルールに従わなくていい」

  2. 抑制欠如/自己統制の欠如(Insufficient Self-Control/Self-Discipline) – 「自分を律するのが苦手」


5. 厳格な基準(Overvigilance & Inhibition)

👉 「人生は厳格であるべき」という信念

  1. 否定的思考/悲観(Negativity/Pessimism) – 「どうせ悪いことが起きる」

  2. 情緒の抑圧(Emotional Inhibition) – 「感情を表に出してはいけない」

  3. 過度な厳格さ/批判(Unrelenting Standards/Hypercriticalness) – 「完璧でないといけない」

  4. 処罰(Punitiveness) – 「ミスは許されるべきでない」


この分類を見ると、自分がどのスキーマに影響されているかがより明確になりますね。どの領域が強く働いているかによって、対処法も変わってきます。

■ビリーフセラピーとの違い

スキーマ療法とビリーフセラピーの違い

1. スキーマ療法(Schema Therapy)
スキーマ療法は、ジェフリー・ヤングによって発展された認知行動療法(CBT)の発展型であり、特に人格障害や長年にわたる深い心理的問題に焦点を当てます。

  • 基本概念:
    幼少期の経験(特に傷つき体験)をもとに形成された「スキーマ(早期不適応スキーマ)」が、成人後の行動や感情に強い影響を与える。

  • 特徴的なアプローチ:
    スキーマの特定(例:「見捨てられスキーマ」「失敗スキーマ」など)
    モード(心の状態)に注目(例:「傷ついた子どもモード」「厳格な親モード」など)
    認知・行動・感情の統合的アプローチ(CBT+イメージ療法+対人関係療法)
    治療者との関係性を重視(限定的リペアレンティング)

  • 対象者:
    長年にわたる自己破壊的パターンを持つ人、人格障害、慢性的なうつや不安に悩む人。


2. ビリーフセラピー(Belief Therapy)
ビリーフセラピーは、私たちの信念(ビリーフ)が行動や感情に強く影響を与えるという認知療法的なアプローチに基づくセラピーの一種です。

  • 基本概念:
    「自分にとっての現実(思考・行動・感情)は、内面の信念体系によって決定される」という前提に基づく。

  • 特徴的なアプローチ:
    ビリーフの特定(例:「私は価値がない」「愛されるには努力が必要」など)
    ビリーフの検証と再構築(論理的に誤りを探し、適応的な信念に変える)
    新しいビリーフを行動に落とし込む(行動実験を行い、新しい信念を強化)

  • 対象者:
    ネガティブな思い込みによって人生が制限されている人、不安・うつ・自己肯定感の低さに悩む人。


違いのまとめ

項目 スキーマ療法 ビリーフセラピー
焦点 幼少期の傷つき体験から形成された「スキーマ」 誤った・制限的な「ビリーフ(信念)」
原因の重視 過去の経験による深い心のパターン 現在の思考の枠組み
アプローチ 認知・感情・行動・関係性の統合的アプローチ 認知療法に基づく「信念の書き換え」
主な手法 限定的リペアレンティング、モードワーク、イメージ療法 認知の再構築、行動実験
対象 人格障害、長期的な心理的問題 ネガティブな思考・自己評価の低さ

どちらを選ぶべきか?

  • 深い人格的な問題や、幼少期の影響が根深い場合 → スキーマ療法

  • 日常的なネガティブ思考や、現実の認知の歪みを修正したい場合 → ビリーフセラピー

どちらも「思考が感情や行動に影響を与える」という認知療法的な観点を持っていますが、
スキーマ療法は「幼少期からの根深いパターン」に、ビリーフセラピーは「今の思考の枠組み」に焦点を当てる点が違います。